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2008年1月 9日 (水)

10−6 格差とメディア

 負け組という言葉を雑誌などでよく目にするようになりました。フリーター、ニート、ネットカフェ難民などを狭い意味では指しているようです。広い意味では、所得や社会的地位の高くない人全体を指すこともあります。
 色々な定義はあるでしょうが、負け組とは時間があって、お金のない人のことだと私は考えます。反対に、時間がなくて、お金のある人がエリートでしょうか。時間もお金もある人はセレブと呼ばれる人たちでしょう。時間もお金もない人は、不運な人だと思います。でも、不運と不幸は一緒ではありません。時間やお金のあるなしと、幸か不幸かは別問題だと思います。むしろ、時間もお金もある人の方が、不幸せに見える人は多い気すらします。
 民放テレビは電気代のほかは、視聴するのにお金がかかりません。内容は難しくなく、娯楽性が高い番組がほとんどです。集中力を必要としない、リラックスしたメディアです。なんとなく、ダラダラとスイッチを入れたままにしがちです。お金はかかりませんが、時間を費やします。そうすると、時間があって、お金のない人にはぴったりです。ミクシィやグリーなどのソーシャル・ネットワーク・サービスにも同じ傾向があると思います。お金はかかりませんが、手間隙がかかります。ミクシィはいわゆる負け組に親和性が高い気がします。
 時間がなくて、お金のある人の典型はエリート・ビジネスマンでしょうか。これらの人は、ニュース番組をチェックするくらいで、テレビをだらだら見ないでしょう。他方、忙しい人は新聞には目を通す人が多いようです。一覧性にすぐれた新聞は、忙しい人にもってこいのメディアです。持ち運び可能な時事ポータルサイトが新聞だと思います。新聞はそもそもジャーナリズムで、硬い内容が多いですから、内容面でもエリートと呼ばれる人にはぴったりでしょう。それから、将来のインターネットで自動巡回検索などエージェント(代理人)機能が広がるなら、想定されるユーザーは、この忙しくてお金のあるエリート・ビジネスマンだと思います。
 セレブと呼ばれる人々は、メディアに疎そうなイメージです。インターネットはしなさそうですし、テレビを見るよりも観劇に出かけそうな印象です。メディアを介さずに、コンテンツに直接ふれたり、サービス担当者に直接頼んだりすることができそうです。プライベート・バンキングというお金持ちを対象にした個別資産運用サービスは、まさにこの例だと思います。メディアを介するということは、不特定の人とコミュニケーションすることですが、セレブと呼ばれる人は、メディアを介さずに特定の人とコミュニケーションしているイメージです。
 お金も時間もない人は不運な人というか、不十分な人だと思います。だらだらとテレビを見ている時間もないでしょうし、セレブのようにサービスしてくれる相手もいないでしょう。そういう人に親和性があるのはラジオではないでしょうか。働きながら、生活しながらの、ながらメディアがラジオです。お金も時間もないのは、大変かもしれませんが、結構、充実感ある生活かもしれません。ラジオは災害にも強いですし、社会の基盤的なメディアです。
 社会に居場所があり、将来を悲観するような状況でなければ、時間や所得の多寡に関わらず、人は暮らしていけると思います。個人的には、フランスに留学して言葉にとても不自由した時、少し大げさかもしれませんが、社会的弱者になった気がしました。同時に、中学の英語の授業で寝ていた友人の気持ちがやっと分かった気もしました。言葉が通じないと生活全てが不自由ですが、私にはパリでも学校にも街にも居場所があったので、不思議と疎外感はありませんでした。日本に帰国する期日が明らかだったことも、暮らしに張りがあった理由の一つだったと思います。出口が見えれば、明るい先もイメージできます。インターネットが広く普及する前の時期だったことは幸いでした。現在なら、フランスにいてもインターネットというメディアを通じて、日本社会が身近すぎたことでしょう。それだと、異文化で暮らすという留学の副次的効果も薄らいでしまったと思います。
 格差とメディアの話に戻ると、日本では時間や所得の多寡に関わらず、携帯電話は最も広く行き渡ったメディアになりました。この傾向は、時を経るごとに強くなるでしょうし、海外でも同じだと考えます。携帯電話でブロードバンドに常時接続という環境が将来やってきます。情報の受信も発信も格段に便利になります。でも、情報をすぐに発信しないでよく考えたり、なかなか情報を手に出来なかったりする経験は、人を成長させる面もあると思います。私自身も、田舎の大きくないレコード店や書店という不自由なメディアを介せざるをえながったことが、今考えると貴重な経験でした。

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