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2008年1月10日 (木)

10−7 犯罪

 有罪の総数は戦後、減少を続けてきました。それが、90年代に入ると増加に転じました。しかも、凶悪犯罪が大きく増加したため、治安は一気に悪化した印象を受けます。法制度が異なっていたので単純比較は出来ませんが、明治時代の犯罪発生件数は現在の十倍以上でした。世の中が定まっていなかったことの表れでしょう。これまで、統計上、最も凶悪犯が少なかったのは昭和の末です。昭和と平成とでは、世の中はどこか変わってしまったのかもしれません。
 先に自殺について述べましたが、自殺率と反対に、犯罪率は夜に増加し、年齢を重ねるごとに傷害などの犯罪率は低下する傾向にあります。他方、自殺率と同じように犯罪率でも、男性の方が女性よりも高い値を示します。ただし、最近では女性、特に少女の犯罪率が急上昇しています。
 犯罪は誰しもが同じような確率で起こすものではありません。暴力団や外国人や若者の犯罪率は高率です。例えば、暴力団の構成員が検挙される率は、一般人の百倍以上の数字です。また、平成に入って、来日外国人の犯罪が急増する傾向にあります。来日外国人が殺人や強盗を犯す率は日本人一般の7〜8倍にも達すると推計されています。細かく見てみると、来日外国人凶悪犯の半分は不法残留者です。それから、少年の検挙人員率は成人の10倍近くに達します。中でも、窃盗や恐喝の社会全体に占める少年犯罪数は半分に達します。少年犯罪が成人犯罪と異なる特徴には、シンナーなど毒物に関係する犯罪が多いことがあげられます。
 ただし、従来型の犯罪には講じる術がないわけではありません。例えば、暴力団に対しては、暴力団の弱体化を図って、暴力団対策法が平成四年に施行されました。来日外国人の不法残留者に対しては、取締強化がなされることがあります。また、保護主義を基調としている日本の少年法も、近年は一部厳罰化が図られるなど対策が試みられています。ちなみに、アメリカでは少年犯罪に対する法的規制強化により犯罪率は低下しました。
 問題は、普通だと思われていた人や少年がおこす凶悪犯罪です。毎年のように、これらの凶悪犯罪が多発するようになりました。遺伝的に何らかの変化が生じて、凶悪犯罪発生率が高まっているわけはありませんから、普通だと思われていた人々の犯罪を社会が抑制できなくなったと考えるしかありません。デュルケームのいう、社会基準が緩んで、常識や感覚が麻痺するアノミー現象が起きていると考えられます。
 常識や感覚が麻痺した人々は何をしでかすか分かりません。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の信者は、アノミーに陥り、常識や通常の感覚が麻痺した狂信者でした。善悪の判断がつかなくなり切断殺人などを犯す凶悪な少年犯罪者も、本質的部分ではオウム真理教信者と変わらないでしょう。しかも、日常行動が一般の人と違わなければ、外側から異常を知ることは出来ません。アノミーは社会や共同体の連帯が欠如すると生まれます。オウム真理教は欠如した連帯を、狂信により取り戻そうとする愚かな教義でした。
 普通だと思われていた人や少年が犯す凶悪犯罪を減少する術は、法制度を変更することではありません。時間はかかりますが、善悪の判断がつかない人を生み出す社会を改める以外に方法はないでしょう。社会や共同体の連帯を適度に回復し、常識や普通の感覚を再生するのが大筋の方向だと考えます。

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