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2007年12月 9日 (日)

7-9 戦争と技術

 インターネットの原型は、アーパネットというアメリカ国防総省によるコンピューター・ネットワークです。アーパネットの通信方式、つまりインターネットの通信方式は、1960年代に提唱された通信方式でして、通信経路を弾力的に変更できるものです。これは、ソ連の核攻撃によって特定の通信施設が破壊されても、破壊された施設を迂回して、通信を行うことができるよう考え出されたものです。核戦争への備えが、まわりまわって現在のインターネット網につながっています。
 近年、カーナビによって、地図を開かずに知らない目的地に着くことができるようになりましたが、カーナビはGPSという衛星を使った米軍の測位システムを利用して動いています。アメリカは政府主導の研究開発が少ない国との評価がありますが、これは軍事の研究開発を除いた場合です。アメリカは毎年、巨額の研究開発を軍の予算でまかなっており、その成果がインターネットのように民間技術に転用される仕組みになっています。日本も制度として見習う余地があるでしょう。
 コンピュータの進歩も軍事と強く関係しています。弾道計算に利用するために、ENIACというコンピュータが1946年に作られました。ENIACは、それまでのコンピュータの数千倍の計算速度でして、その開発予算のほとんどはアメリカ陸軍によるものでした。それから、衛星などを打ち上げるロケットも、戦争がきっかけとなって開発が進みました。現在のような液体燃料ロケットは、第二次大戦中にナチスによって実用化されたものです。
 第一次大戦を契機に普及したものに、腕時計とバーバリーのコートがあります。第一次大戦前は懐中時計が主流でしたが、戦場ではいちいち取り出す必要がない腕時計が重宝がられ、それを契機に腕時計が一気に普及しました。バーバリーのトレンチコートはイギリスの陸軍、海軍に数十万着が調達されたことにより、これまた一気に広まることになりました。これらは、技術だけでなく生活スタイルにも戦争は大きな影響を与えることの典型です。
 近代国家の軍隊は職業軍人によるだけでなく、志願兵や徴兵された一般人から構成されます。軍隊は時間に従い、大集団で行動する組織です。近代に入る前の農村では、洋の東西を問わず、おおよその時間感覚で少人数により働くことが一般的でした。それが近代以降は、会社や工場では正確な時間に従い、規律正しく集団で働くことが一般的になりました。軍隊を経験した者は、会社や工場という近代的な組織にスムーズに溶け込む術を結果として見につけました。学校とともに、近代的な労働者を育む役割を軍隊が果たしました。
 戦争は人的にも物的にも社会にマイナスの効果を及ぼします。他方、技術進歩を促したり、ライフスタイルを向上させたりするプラスの結果も残します。軍隊もある歴史段階では、社会の近代化を促す役割を果たしました。戦争にしろ、軍隊にしろ、よいイメージは少ないですが、社会へのプラスの副次的効果は決して小さくありません。

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