7-7 独裁小国
キューバは1959年の革命で現在の政体になりました。半世紀近くにわたって、実質的な独裁者として君臨してきたのがカストロ国家評議会議長です。カストロは、チェ・ゲバラなどとともに革命以前のアメリカ傀儡政権を倒して、権力を手中におさめました。革命の翌々年にアメリカと国交断絶をし、その次の年に先述したキューバ危機がおきました。革命以来、一貫した政治スタンスは反米です。冷戦期には米ソ対立を利用し、冷戦後は中南米諸国と国交を回復するなどして、したたかに国際政治を渡ってきました。
カストロの半世紀近くには及ばないにしろ、40年近くにわたってリビアで君臨してきたのがカダフィです。カダフィはずっと名目上の公職を離れた形ですが、1969年に起きた革命の指導者として、実質的に独裁体制を続けてきました。リビアの政治スタンスは、反欧米であり、加えて反イスラエルです。伝統的なアラブ主義です。ハイジャックや飛行機爆破事件など数々のテロに、リビアは背後で関わっていたと国際社会では認識されています。80年代にはアメリカはカダフィ宅を空爆するほど、両国の関係は緊張したものでした。
キューバはキューバ危機に直面しましたし、リビアはアメリカによる空爆に直面しました。両国ともに政体の存続が難しい状況を幾度か経験してきましたが、いまだに独裁を保っています。他方、東欧のソ連傀儡政権や中南米のアメリカ傀儡政権は、冷戦が終わると政権の命運が尽きました。国際環境が変化して、後ろ盾の大国が政治姿勢を変えれば、傀儡政権は存続出来ません。キューバやリビアのように、傀儡政権でなく、しかも革命を起こしたカリスマ指導者が牛耳る政権は、案外と強固な基盤を有しています。一党独裁政権であっても、ソ連や中国のような大国では政権内の権力闘争が働き、個人独裁への反動が起きるものでした。しかし、独裁小国は小国であるがゆえに、国家機構が小さく政権内の権力闘争は未然に防止される傾向にあります。したがって、カリスマ指導者の死亡による政権交替期くらいしか政体は本質的危機に直面しません。
ただし、小国はしょせん小国ですので、覇権国家が本気になって軍事介入すれば、その命運は尽きます。イラクのフセイン政権がその典型でした。イラクによるクウェート侵攻と湾岸戦争後の反米スタンスが、イラク戦争につながり、フセイン政権は打倒されました。イラクがキューバやクウェートと違ったのは、アメリカと真正面から事を構えたことです。大国に軍事介入の口実を与えてしまうことは小国にとっては致命的ミスです。イラク戦争後、リビアは核兵器の開発を放棄し、国際的な査察団の受け入れを行いました。同様に、キューバもアメリカとの関係改善を模索しています。
ところで、北朝鮮は傀儡でない独裁政権により運営される小国です。しかも、革命指導者の交替が行われており、権力異動期の政治混乱も当分期待できません。経済事情が悪かったとしても意外に政権基盤は安定しているでしょう。キューバやリビアがそうであったように、軍事的圧力をかけることが、北朝鮮に対する最も効果的な基本政策であると考えます。というか、軍事的圧力なしでは、ほとんどの交渉は実を結ばないでしょう。
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