7-6 キューバ危機
62年夏にソ連の核ミサイルがキューバに配備されました。キューバはアメリカのフロリダ半島からわずか150kmに位置します。10月になるとアメリカを射程圏内とする核ミサイルの配備が明白になりました。ソ連船の海上封鎖をした後、10月22日にケネディ大統領は国民に向けてテレビ演説をし、アメリカ国内の核ミサイルを発射準備態勢にしました。これに対抗して、ソ連も核ミサイルの発射準備に入りました。米ソの交渉が続く中、アメリカの偵察機がソ連に撃墜されるなど緊張はピークに達しました。幸いにも、10月28日にソ連のフルシチョフ書記長がキューバからのミサイル撤去の発表をし、危機は回避されました。世界はあわや核戦争に突入するところでした。
キューバ危機の原因は、ソ連がアメリカの反応を考慮せずに、極秘裏に核ミサイル基地建設を進めようとしたことです。アメリカが実力を行使してまでも反対することはないだろうとのソ連の誤った判断は、ソ連のみならず世界を危機に陥れました。対立する双方が意図して戦争に突入することもありますが、情報不足が誤解を生み、その誤解がまた誤解を招いて、戦争が開始されることが歴史では往々にして起こります。キューバ危機はその典型でした。キューバ危機を教訓に、アメリカのホワイトハウスとソ連のクレムリンをつなぐ直通回線(ホットライン)が設けられました。双方の戦略と装備がお互いに明らかになっていれば、戦う前からおおよその結果を予想できるため、武力衝突を回避する可能性は高まります。ですから、軍事情報の開示は国際秩序安定には不可欠です。アメリカなどが中国に対して、予算規模など軍事情報の開示を迫るのはそのような理由からです。
一見矛盾したようですが、軍人は戦争を嫌います。なぜなら、戦争によって必ず自軍は人的にも物的にも損害を被り、せっかく整備した軍事力が低下するからです。圧勝できるほどの力の差がないかぎり、軍は戦争を望みません。戦争を好むのは、軍でなく、軍の周りにいる人々です。防衛の基本は、味方の損害を最小にして、敵の戦争意志をくじくことです。したがって、パイロットが生き残る可能性の全くない特攻などは、合理的な軍事選択ではありません。
軍が人員や装備を充実させるのは、抑止力を上げて、戦争を回避しようとの判断からです。皮肉にも、米ソが地球全体を破壊し尽くせる核兵器を双方で配備しているのも、小さな合理性を積み重ねた結果です。このような部分で最適、全体で矛盾を合成の誤謬と呼びます。ただし、第三次世界大戦が生じていないのは、相互の抑止力がおおよそ均衡しているとのイメージによる成果です。一方が核戦争を仕掛けたら、反撃により双方ともに破滅的損害を被るという状態を相互確証破壊と言います。20世紀後半の冷戦期間は、世界はこの相互確証破壊のもとで勢力均衡が図られてきました。地域紛争は頻発しましたが、キューバ危機以降は冷たい戦争のまま世界秩序は保たれました。
20世紀末の冷戦終了は世界大戦の危機を減少させました。かわって21世紀は、核兵器の拡散やテロの増大という新たな危機に世界が直面しています。この新しい危機を減ずる
有効な秩序は、まだ出来上がっていません。
« 7−5 核兵器 | トップページ | 7-7 独裁小国 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 10−8 再構築(2008.01.11)
- 10−7 犯罪(2008.01.10)
- 10−6 格差とメディア(2008.01.09)
- 10−5 自殺率(2008.01.08)
- 10−4 格差社会(2008.01.07)
