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2007年12月15日 (土)

8−5 医療制度2

 医療の質を保つためには、無駄を少なくする効率化が必要です。諸外国に比べて長い入院期間を短縮するなど、医療現場(ミクロ)での効率化だけでなく、医療制度全体(マクロ)の効率化が重要になります。医療制度の効率化を目指して、いくつかの国では市場原理の導入が試みられました。しかし、先述したように医療では市場原理はうまく機能しません。そのため、結果として市場原理導入は成果を挙げませんでした。また、性急すぎる改革が医療従事者の十分な理解を得られなかった面もあるでしょう。
 医療制度全体の効率化を行うには、市場原理をそのまま導入するのでなく、ワンクッションおいた工夫が求められます。日本の医療は健康保険組合などの公的機関を経由して支払いが行われています。患者個人の負担もありますが、大部分は公的資金による支払いです。支払いは請求に基づいてなされますから、支払元の公的主体は本来、必要な情報を膨大に集めることが可能なはずです。ただし、従来の紙と鉛筆の処理では、これらの情報を集計して分析するコストが採算にあうものではありません。しかし、医療の情報化がマクロで進展すれば、必要となるコストは低下します。マクロでの効率化とは、コンピュータ化であり、オンライン化であり、データベース化です。物流や金融で行われているIT化が、医療でも出来ないわけはありませんし、同じように効率化にプラスに働きます。
 ただし、忘れてはいけないのは、情報化するのは医療行為そのものよりも医療事務である点です。医療行為が主で、医療事務が従たる役割なのが医療現場の感覚ですが、医療の情報化では順番が逆転します。実はこれが医療の情報化が進まない原因の一つではないかと感じます。医療行為自体に効果を及ぼすものは積極的に導入されても、医療事務にプラスの効果を及ぼすものは、ややもすると二の次にされがちです。ですから、医療の情報化では公的に新しい制度を導入し、構造的に改革を進める必要があります。具体的には、専門職を当てる必要があるでしょう。医療情報師という専門家が医療事務の情報化を担うイメージです。これをマクロで推進するには、公的な予算と定員配置が必要になります。また、医療の情報化に取り組んだ医師でなければ、医療機関のしかるべき地位に就くことができないなどの人事面での方策も検討される必要があるでしょう。なぜなら、医療行為を中心で担っているのは医師であり、医師の参加なくして医療の情報化は進まないからです。
 近年、厚生労働省は地域医療の整備に力をいれています。医療機関を有機的に連携して、質量ともに十分な医療を確保しようとの姿勢です。このため、地方公共団体が医療で果たす役割が高まっています。しかし、現在のままでは地方公共団体に十分な情報がなく、場当たり的に対策を講じることになりそうです。情報を一元的に集約し、それを分析してはじめて、将来計画をたてることが可能になります。市場原理の優れた点は価格をシグナルにして、変化が絶えず明らかになることです。この市場原理が導入困難な医療で効率化を図るには、意識的に情報を収集し、分析するシステムが必要になります。

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