8−6 医療と倫理
医療技術は日々進んでいます。全体としては非常に好ましいことですが、倫理面などで難しい問題に直面するようになっています。
近年、代理出産の問題が世論の注目を集めています。代理母とは、他人の受精卵を子宮に入れて出産する女性です。お腹が大きくなり、出産はしますが、生まれてくる子どもとは遺伝的に全くつながっていません。子どもが出来ない夫婦などが代理出産を利用します。日本では学会で自主規制はされていますが、法律で規制はされていません。現に、日本でも代理出産が行われた例が公表されました。また、海外で代理出産した子どもを戸籍上で実子として扱うことを求めて、裁判がされています。民法では、実子とは母親から物理的に出産された子どもを指します。この規定によれば、代理出産により生まれてきたこどもを実子にするのは容易ではありません。こどもが出来ない人は代理出産を認めてほしいと願っています。かたや、代理出産は自然な行為ではないですし、親子関係という本質的な社会倫理の問題ですので、様々な反対があるのも事実です。現在の最大の問題は、法律による基準がないことです。倫理や道徳について、むやみに法律を制定することは好ましくありません。自主規制というのは、例えば、表現の自由を担保するには良い方法です。しかし、法律がないまま、裁判が行われても、裁判官はルールを作ることが出来る訳ではないので、代理出産に関しては本質的な問題解決につながりません。一義的には立法府の二義的には政府の怠慢と言っても過言ではないでしょう。
反対に法律が出来そうな状況に驚いた案件もあります。フィリピンで臓器売買の事実上の法制化が検討されています。理由は、臓器売買を全面禁止しても地下で行われるので、臓器移植を正しく管理しようというものだそうです。フィリピンの腎臓売買では、日本人は外国人の中で最大顧客との調査もあります。二つある腎臓の片方を提供しても、すぐには提供者に何も起こらないそうですが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病になった時のリスクが高まるそうです。そのような人体への物理的影響もさることながら、生活のために文字通り体を売ることを社会が認めてしまってはまずい気がします。腎臓売買は数十万円でされるそうです。おそらくフィリピン人提供者が手にするのは十万円に満たないでしょう。貧困とはそれ自体が悪です。腎移植など移植医療自体は、適正な医療行為ですが、それを社会が適正に管理する必要が絶対にあります。
医療技術の進歩が社会に及ぼす大きな問題にクローンがあります。10年以上前に、羊の体細胞から遺伝的に全く同一のクローンを作り出して以来、様々な動物のクローンが作り出されています。日本では、人に関するクローン技術は法律で禁止されています。世界的にも同じ流れです。医療技術の進歩も重要な社会的価値であり、法律による一律禁止は医療の進歩にマイナスになることもあるでしょうが、それでもやはり、同一の個体を作り出すことにつながるような研究は、人として触れてはいけない領域ではないかと思います。
« 8−5 医療制度2 | トップページ | 8−7 障害者福祉 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 10−8 再構築(2008.01.11)
- 10−7 犯罪(2008.01.10)
- 10−6 格差とメディア(2008.01.09)
- 10−5 自殺率(2008.01.08)
- 10−4 格差社会(2008.01.07)
