8−1 人口構造
経済でも軍事でもなく、人口こそが長期では社会構造を決定します。社会科で習った人口ピラミッドを覚えているでしょうか。男女別に各年齢の人口を棒グラフで表したものです。出生数が毎年同じか増加傾向にあるなら、戦争でもないかぎり、若い人ほど人口が多くなるので棒グラフは末広がりのピラミッド型になります。日本でも大正の頃は、人口ピラミッドがその名の通りピラミッド型をしていました。それが現在では、五角形のような格好になっており、五十年後には80歳前後にピークのあるひし形になると推計されています。
五角形になったりひし形になったりしたのは、高齢化が進んだからと子供の生まれる数が減少したからです。子供が多く生まれたのは、戦後直後のベビーブームとそのベビーブーム世代の子供が生まれた70年代前半です。現在の人口構造でも、それらを反映して人口のピークが二つできています。ベビーブームは一時の現象でなく、70年、80年の長きにわたって社会構造を決めるものでした。
少子高齢化が進むと、医療費や年金など社会保障費の経済全体に占める割合が高まります。働いている現役世代から高齢者に所得の移転が行われるので、現役世代の手取りは減少することになります。少子高齢化もイギリスのようにゆっくりと進んだ国ではそれほど問題になりませんでした。しかし、日本のように急激に少子高齢化が進むと、社会構造、経済構造が短期間に大きく変わるので、様々な問題が生じます。
ただし、少子化はともかく、高齢化それ自体は全く悪いことではありません。むしろ好ましいことです。高齢化社会とは長寿社会であり、人類の悲願でした。それを科学や医療の進歩により達成しようとしたのが近代の歩みでした。つまり、高齢化社会とは近代化を達成した結果です。現在の日本は、急いで坂を上ってみたら、別の新しい壁にぶつかったという感じでしょうか。
年を重ねると人は保守的になります。これは集団でも同じことです。高齢者が多く、若者の少ない社会は変化に乏しい保守的に社会になるでしょう。反対に若者が多い社会は不安定な社会です。ある歴史学者によると、若者が社会に占める率と革命発生率には比例するそうです。フランス革命の頃も、ナチスの頃も、60年代の学生運動の頃もみな、若者の割合が高い社会だったそうです。
今後の日本社会は一層、高齢化が進みます。ですので、これからの社会のイメージは明治時代や高度成長期の元気な社会ではなく、江戸中期の安定した社会だと予想します。戦国文化には戦国文化のよさがありました。江戸文化にも江戸文化のよさがあります。社会も同じで、安定期には安定期のよさがあるでしょう。とかく少子高齢化というと悪いイメージをもたれがちですが、そんなにすてたものでもないはずです。それから、長期の経済成長を決定する要因は人口だけではありません。むしろ技術進歩こそが重要です。技術進歩が経済成長を促す安定した社会が、これから望まれる社会だと考えます。
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