8−3 ニート
ここ数年、ニートという単語が普通に使われるようになりました。厚生労働省は、15才から34才で労働も勉強も家事もしていない人を、ニートと位置づけています。平たく言うと、ぶらぶらしている若者を指した言葉です。60万人くらいがニートに該当すると推計されています。家事手伝いは、厚生労働省の統計ではニートに含まれませんが、内閣府の調査では含まれることがあります。
ニートというのは、そもそもはイギリス発祥の言葉です。Not in education, employment, or trainingの頭文字をとったものです。ただし、16才から18才を対象にしたものでしたので、日本でのニートの意味とは異なるものでした。また、日本のように一般用語としてニートという単語は普及してはいないそうです。しかし、私がヨーロッパにいた経験からすると、ニートという言葉はなくても、ぶらぶらしている20、30才代を問題にする風潮はヨーロッパにも確実にあります。また、日本と同じように、成人しても独身である間は親と同居する傾向があるフランス、イタリア、スペインなどの国々では、日本でいうニートは多数にのぼる印象です。ただし、ヨーロッパは若者失業率が日本よりも高い傾向ですので、ニート問題よりも失業問題に多くの関心が集まります。
歴史的にみると日本は、ぶらぶらする若者がずっと存在した社会でした。理由は稲作社会であったことです。稲作は春の田植え期と秋の刈り入れ期に繁忙を迎え、必要な労働力がピークに達します。しかし、夏と冬は、春と秋ほどの労働力は必要ありません。繁忙期に季節労働者として働き、そうでない時はぶらぶらしている「やっかい者」を、社会として抱えていたのが機械化以前の稲作農村でした。また、武家でも次男坊、三男坊は肩身の狭い厄介者ではあっても、家族の一人でした。
ある種の伝統であるにも関わらず、最近はニートに対して冷たい風潮があります。昔と違って、繁忙期の労働力や長男が欠けた時の代役という役割が現在のニートにないことが理由でしょうか。働かざる者、食うべからずの勤労意識もあるでしょう。広く指摘されるように、20、30代での職業経験は、個人の労働生産性を生涯にわたって決定しがちです。だからこそ、日本だけでなく、ヨーロッパでも若年失業が問題視されてきました。
ニートが拡大した原因には様々なものが上げられています。個人的理由から不況などの社会的理由まで様々です。しかし、ニート問題を過大視しすぎたり、むやみに対策をたてたりするのではなく、社会全体が少し冷静になる必要があると考えます。壁にぶつかったり、悩んだりすることは20代、30代ではよくあることです。社会として、支援するプログラムは用意すべきものの、個人の意志が解決の決め手になる問題ですので、押しつけや一方的扱いは適当でないでしょう。支援プログラムの成功事例を地方自治体レベルで共有し、広めるのが現実的取組として有効だと考えます。
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