9−10 環境問題
猛暑や暖冬など地球温暖化を裏付けるような年が続いている気がします。異常気象も毎年だと何が正常だか分からなくなります。環境破壊や公害が社会問題になってから何十年もの歳月が過ぎました。その間に、先進国の一部地域の問題から、途上国を含む全地球的な問題に事の本質が変化してきました。環境問題は経済成長と一体で現れます。地球にとっての環境問題は、人間にとっての生活習慣病でしょう。どちらも豊かな社会が生み出す歓迎されざる結果です。
地球温暖化の主要な原因の一つと考えられている二酸化炭素については、先進国の排出量は一定の増加傾向に収まっています。他方、途上国は急激な増加傾向を示しています。環境対策を講ずるとコストがかかります。先進国が以前そうであったように、途上国が環境よりも経済成長を優先することは容易に想像がつきます。したがって、日本など環境技術で競争力を持つ国が、全体最適化を図るために、途上国への環境技術支援を拡大する必要があります。
個別の国で問題なのは、アメリカと中国です。アメリカは二酸化炭素など温室効果ガスの削減を定めた京都議定書から離脱をしています。アメリカは世界最大の経済大国であり、世界のGDPの三割近くを生み出しますが、同時に世界の二酸化炭素排出量の1/4を占めます。他の先進国と比較して、経済規模に対する二酸化炭素排出量は大きく、環境負荷の高い経済システムを続けています。京都議定書からのアメリカの離脱は、地球環境に対する国際合意よりも経済優先の国内世論を優先したためです。戦前、国際連盟に加盟しなかったことが有名なように、時にアメリカは大変内向きな政策を採用することがあります。
中国は京都議定書に批准していますが、経済発展段階のため、現状では排出削減義務のない国にあたります。世界銀行の統計によれば、中国のGDPは日本の半分の水準であり、世界GDPでも5%を占めます。他方、二酸化炭素排出量は世界の15%も占めます。経済成長と環境対策のバランスが全く取れていない国と言っても過言ではありません。ちなみにインドも同様に急激な経済成長に伴い、二酸化炭素排出量が急増しています。そろそろ国際社会は中国を特別扱いせずに、排出削減義務のある国に位置づけるのが適当です。しかし、環境対策は当該国政府の自発的な取組みに期待するところが大きいので、強い圧力は逆効果になりがちです。現実的には、技術支援などを絡ませつつ、粘り強く国際社会が説得するしかありません。
環境問題は経済学的にいうと外部不経済の問題です。環境コストが適切に市場価格に反映されていないので、例えば二酸化炭素では社会的に適切な水準よりも現実の排出量が多くなってしまいます。経済的な対策としては、税で負担を課したり、権利を売買したりして、経済的内生化を行うことです。京都議定書の排出量取引は、環境に関する一種の権利売買でして、取引を通じて全体最適を目指す政策です。また、技術進歩によって、有害物質を排出する割合を低下させることも非常に有力な方策です。ディーゼル車に低公害触媒をつけたり、ディーゼル車を低公害な車両に変更したりすることの効果は明々白々です。政策誘導するためには、法律で罰則を強化することも有効ですし、税や予算で支援措置を講ずる手もあります。規制強化に対しては、経済界の一部からは少なからず反対の声もあがるでしょうから、どれだけ本気で政治的に取り組むかが成否の分かれ目になります。
さらに、環境問題に関する普及啓蒙活動も非常に重要です。特に、ミュージシャンやアーティストなど社会的影響力が強い人が環境問題を訴えることは、大きな効果が期待できます。近年、日本でもミュージシャンやアーティストによる環境イベントが頻繁に開催されており、環境問題を考える機会が増えました。環境問題は、個人レベルでの行動も大切ですが、ついつい実際の行いはおろそかになりがちです。なので、日頃から環境問題の深刻さを認識する機会が多いに越したことはありません。
環境問題は例えて言えば生活習慣病です。したがって、短期間に劇的改善を目指すのでなく、少しずつ望ましい状態に近づけようとするのが現実的処方箋です。
