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2007年12月21日 (金)

9-1 国土と文化

 社会や文化は生産形態に影響を与えるだけでなく、生産形態から影響を受ける面もあります。特に、長い時代にわたって主要な産業だった農業と密接な関係にあります。日本の農業は、北限稲作農業が主でした。そのため、日本の社会や文化は北限稲作農業の影響を受けています。
 古くはアダム・スミスが指摘しているように、米は小麦などに比べて、同じ耕作面積での生産カロリーが大きく、同一面積で多くの人を養うことが可能です。専門的な言葉であらわせば、土地生産性が高いということです。同時に、日本の稲作は欧米の小麦生産等と比べて、手間ひまのかかる農業です。これを労働生産性が低いと言います。日本の農業の特色は土地生産性が高く、労働生産性が低いことです。ヨーロッパの麦作農業はこの正反対です。狭い土地で人手をかける日本と広い土地で人手をかけないヨーロッパです。どちらも環境に適合した結果です。
 稲は熱帯原産の作物です。この熱帯原産の作物を日本では亜寒帯である東北で栽培するまでに改良を重ねてきました。タイで見られる浮き稲など、種をまいた後はほとんど人手をかけない稲作もありますが、日本の稲作は田植えや草取りなどで多くの労力を要します。特別の腕力は必要としませんが、根気がいる労働です。日本の丹誠こめた物づくりの原点は稲作にあるでしょう。
 田植えや稲刈りなどの稲作労働が日本に与えた影響に、共に働く文化があります。日本では現代でも、一緒に働くことを通じて、お互いを認め合い、組織や地域の維持運営をはかります。密集して多くの人がともに働くわけですから、個性よりも協調性が重視されます。また、島国であり、異民族が流入しなかったことも協調性が重視された理由でしょう。異民族と戦うことが日常の社会では、協調性よりも個性や生命力が求められます。かたや、一緒に働くことで成り立つ社会はトラブルが発生しないように、察しあったり、未然に調整したりする社会にだんだんとなっていきました。
 また、家畜に対する接し方は日本とヨーロッパでは大きく異なります。日本では農耕馬は貴重な労働力であり、土間に入れることすらありました。家族の一員のような扱いです。他方、ヨーロッパでは家畜は労働力であるよりも厳しい冬を越すための貴重な食料です。冬がおとずれる前に絞めて、保存食にしました。ヨーロッパ人が日本人よりも残酷なわけではありません。必要に迫られた結果です。時に家畜の命を慈しむこともあったでしょう。家畜は食料になる運命である、動物と人間とは異なる存在であると宗教的にも無意識にも肯定する必要があったはずです。これは人と犬の間にも当てはまる気がします。日本人の犬へのしつけに比べて、例えばフランス人のそれはきわめて体罰的です。日本人のように家族扱いするのでなく、あくまで上下をはっきりさせた関係です。かつてのヨーロッパの植民地統治形態にも、ヨーロッパ社会での人間と家畜の影響があったと推測します。

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