6-8 オーストラリア
近年、安全保障分野などで日本とオーストラリアの関係強化が進んでいます。日本とEUの間と同じく、日本とオーストラリアの間には難しい外交問題はありません。オーストラリアは資源が豊富な南半球の国です。国民の9割が白人で、1/4が外国生まれです。これらの点は日本と大きく異なりますが、欧米から遠くに位置する先進国であり、アジアと関係は深いものの、いわゆるアジア諸国とは一線を画する存在であるところは非常に似通っています。国際関係上は共通の利害を有する、同じようなポジションを取る国同士と考えられます。
オーストラリアは英連邦の一員であるため、元々はイギリスに安全保障を依存していました。しかし、第二次大戦後にイギリスの国力が低下すると同じ状況にあった隣国ニュージーランドとともにアメリカと軍事同盟を結びました。現在、オーストラリア国内には米軍が駐留しています。オーストラリアはイラク戦争や東ティモールの国連平和維持活動に軍を派遣しました。日本にも米軍が駐留しており、日本もイラク戦争や東ティモールの国連平和維持活動に自衛隊を派遣しました。安全保障上、非常に似た位置にいる両国は、07年に安全保障に関する共同宣言を結びました。日本にとってアメリカ以外の国と安全保障に関して協力関係を文書化したのは初めてだそうです。
アメリカのように自由に安全保障を考えられる国は限られています。それこそ大国の特権です。他方、十分な国力を有しない小国には選択余地はありません。世界の大勢に従うまでです。間にある中規模の国は、国内事情と海外事情を勘案して、自国に有利になるように安全保障政策を判断します。例えば、ロシアやフランスがイラク戦争当初、参戦に反対したのは、武器輸出や石油開発の側面を計算してのことだろうと推測されています。その反対したロシア、フランス、ドイツも海軍を近海に派遣し、アメリカに一定の協力姿勢を示しました。イラク戦争に参戦したイギリス、イタリア、韓国などは、国内に駐留する米軍に安全保障を委ねている国々です。また、ポーランドやウクライナなどはロシアと距離をおき、アメリカと接近する外交上の選択から、イラク戦争に参加したようです。このような駆け引きが国際社会では繰り広げられます。
近年、日本の安全保障上で最大問題は北朝鮮です。北朝鮮に備えるためには、短期的には日本はアメリカと共同歩調を取るのがベストでしょう。日本政府もはじめからイラク戦争の開戦理由には無理を感じていたと推測します。しかし、共同歩調を取るアメリカを支援しない選択は総合的には取りえません。イギリスのブレア政権も同じだったでしょう。イタリア、韓国、オーストラリアも同様です。長期的にアメリカと距離を置くとの選択は積極的検討に値しますが、短期的には現実的選択になり得ない場合が多いでしょう。
安全保障上の長期的選択を検討するにあたっては、同じ国際環境にある国の戦略が参考になります。自らのことはなかなか客観的に眺められません。オーストラリアがどうするかを考えるのは、日本を客観視する参考になります。
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