4−6 規制緩和と民営化
90年代は規制緩和の時代でもありました。規制緩和は政治的に手の付けやすい改革です。特定業界は反対しますが、財政改革や不良債権処理に比べて規制緩和の政治的リスクは高くありません。90年代は規制緩和による内需拡大を欧米から迫られましたし、国内でもビジネスチャンスを求めて規制緩和が要望されました。従来、規制により参入できなかった領域が民間に開放されるのは新たにフロンティアが出現するのと同じです。例えば、昭和の終わりに行われた電気通信事業の開放は市場拡大に大きく寄与しました。
90年代に撤廃された規制は実際のところあまりありません。許可を認可に、認可を届出に変えるような規制変更がほとんどでした。ただし、規制変更でも政策担当者が考える以上に規制緩和の効果は働くものです。規制をクリアするために手間隙がかかることは事業意欲の減少につながりがちです。わずかであれ規制が緩和されることは実務上もプラスですし、行政裁量の減少にもつながります。さらに、規制緩和は新規参入を容易にするようなプラスの印象を世間に与えます。普通の人にとって、規制を理解することは容易ではありません。役所の意向を気にしなくてよいのは、民間の判断を自由にします。
規制には経済的規制と社会的規制があるとされてきました。しかし、簡単に二分できません。タクシーの台数制限や料金規制の緩和は、コスト競争をよび、不幸にも安全配慮を怠ることにつながることがあります。これは運輸規制が経済的規制であり、社会的規制でもある例です。近年では、規制緩和の行き過ぎを指摘する声も聞かれるようになりました。絶対的に正しい規制水準というのはありません。規制を時代環境に合わせる必要がありますし、現実を踏まえて再設計する姿勢が大切です。
90年代が規制緩和の時代なら、00年代は郵政民営化の時代でしょう。郵政民営化は5年に及ぶ小泉政権の最大テーマでした。80年代の国鉄は、毎年1兆円もの赤字を計上しており、37兆円にも及ぶ巨額の累積赤字解消が民営化の理由でした。それと同じような積極的理由は郵政民営化にはありません。また、21世紀において郵政事業は国の根幹ではなく、国論を二分するような産業でもありません。率直に言って郵便局が民営になろうがならなかろうが、大多数の国民にとってはどちらでもよいことです。ですので、支持率の高い総理大臣が郵政民営化を改革の象徴とし、自らの政治生命をかけるのなら、反対する国民がすくないのも当然の結果です。
実際の郵政民営化は自由化と捉えるのが適当でしょう。郵貯・簡保の自由化は金融自由化の仕上げをかざるものです。従来、郵便局は競争が十分でない金融業界で、競争を促進する役割を果たしました。その役割が終わり、民営化後は自由化された市場で有力なプレーヤーとして活動することになります。大筋として現実的な方向でしょう。万が一、民営化して問題が発生するようなら、柔軟に修正を加えるのがよいと考えます。民営化を先駆けたニュージーランドでも民営化の見直しが行われました。民営化も制度変更の一つにすぎません。教条的にならずに、どんな制度であれ時代と環境にあわせるのが適当です。
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