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2007年11月13日 (火)

5−3 皇室と制度

 日本国憲法の第一章は天皇です。大日本帝国憲法も同じでした。天皇の規定が憲法で非常に重視されている証拠です。天皇は英語ではエンペラーと訳されます。でも、エンペラーの本来の訳は皇帝のはずです。秦の始皇帝やナポレオン皇帝の覇者のイメージと、天皇のイメージは大きく異なります。古い中国には冊封という外交関係がありました。この冊封により皇帝に地位と領土を認められるのが王です。中国の5世紀頃の書物には、倭国王として当時の日本の王が出てきます。天皇は中国皇帝に冊封される地位ではないので当然ながら王ではありません。また、日本では権力の移り変わりと関係なく、皇室はずっと続いてきました。ヨーロッパや中国では、王朝は栄えて滅びての歴史でしたので、この点でも皇室の伝統は大きく異なります。そのほか、皇室と神道は密接な関係にあります。ローマ教皇は長い歴史を持つ宗教的存在であり、国家のトップであった時期もあります。天皇と似ているところもありますが、選ばれる存在であることが天皇とは根本的に異なります。総合すると天皇は世界史的に似た例のない存在ということになります。
 日本国憲法では天皇は日本国の象徴です。日本政府がGHQと憲法に関して交渉する中で、英語のシンボルの訳として、象徴という言葉が当てられました。大日本帝国憲法では天皇が天皇大権と呼ばれる広い権限を持っていましたが、日本の歴史で天皇が権力者であった期間はわずかです。特に、鎌倉時代以降の武家社会では、今の日本同様に象徴的な地位であったと見て、あながち間違いではないでしょう。他方、自らの権威をあげるために、天皇の歴史的側面や宗教的側面を利用したのが明治政府でした。それが行き過ぎ、だんだんと天皇のカリスマ性を悪用したり、宗教的に妄信したりする風潮がはびこりました。昭和になってからの一部軍人などは、神話を事実とごちゃまぜにして、天皇を現人神と崇めるほどでした。昭和天皇ご自身が自らを大日本帝国憲法に基づく立憲君主として律していたにもかかわらずです。日本国憲法で天皇が日本国民統合の象徴されているのは、歴史的には妥当なところではないでしょうか。
 現人神でなくても、天皇が社会的にえらい存在であることは変わりません。万世一系とかなんとか理由がつけられますが、本来、えらいに理由は不要でしょう。伝統的にえらい存在であれば、尊ぶのが自然な振る舞いだと思います。伝統と絡み、皇位継承が近年色々と議論されました。皇位継承は専門家でも細部の見解が別れる難しい問題です。ただ、結論もさることながら、静かに控えめに検討する姿勢こそが社会的に妥当だと考えます。皇室報道についても同じです。開かれた皇室が世の流れであっても、無理矢理こじあける必要はないでしょう。表現の自由は憲法で保障されていますが、謙抑的なくらいが適当な報道領域はあるはずです。憲法における天皇の規定は、伝統を踏まえたものですし、社会的にも定着していると思います。皇室制度は部分的に見直しがさけられない点もあるでしょうが、国民感情にも配慮し、ゆっくり自然に答えをだすのがベターだと思います。

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