5−5 刑事と民事
裁判には大きく分けて、刑事裁判と民事裁判があります。犯罪事実の有無により、刑罰や刑期を決めるのが刑事裁判です。他方、私的な紛争を法的に解決するのが民事裁判です。例を示すと、交通事故を起こした時に、刑務所に入るかどうかを扱うのが刑事裁判で、いくら損害賠償を支払うかを扱うのが民事裁判です。交通事故といえば、飲酒運転の厳罰化が事故数減少に貢献しているとの分析があります。刑罰には犯罪の抑止効果がある証拠です。刑事裁判と民事裁判は、それぞれ刑事訴訟法と民事訴訟法という手続を定めた法律に基づいて進行します。ところで、まれに刑事裁判と民事裁判で勝ち負けが異なることがあります。これは、両者の目的が異なるため、結果が異なることも起こりえるからです。論理的に矛盾はないのですが、割り切れない印象を持つ人が多いでしょう。
犯罪か否かは、刑法の条文に該当するか(構成要件該当性)が初めの基準です。近代刑法では人権に配慮し、事前に法律で決められていなければ、罰せられないのが決まりです。次が違法か否かでして、条文に該当する行為でも正当防衛などは違法ではありません。最後が責任を問えるかどうかです。例えば、精神障害を煩っている人は、条文に該当する違法な行為をしても、責任を問われないので有罪になりません。そのような行為は、治療の対象であっても、処罰の対象ではないとの考えが背景にあります。悪いことをしても処罰されないことに対して、釈然としない印象があるかもしれませんが、近代刑法では刑罰は復讐でなく再発防止を目的にするので、このような結論がとられています。
逮捕は主に警察の役目ですが、裁判にかける否かは検察官が判断します。汚職事件や経済犯罪では、検察官が資料を押収する姿が放送されます。検察官の権限は非常に大きく、情状や犯罪の軽重によって、裁判にかけるのを見送ることも出来ます。また、検察官は一人ひとりが独立して職務を遂行する制度になっています。日本では、法務大臣であっても直接に現場の検察官を指揮出来ない制度です。時々、国策捜査という言葉を耳にしますが、制度からすると政府の方針で捜査がなされる形にはなっていません。ある程度の証拠を目にすれば、職業柄、動いて確かめようとするのが検察というものです。これが捜査される側からするとあたかも政府の方針があるかのように映るのだと思います。
民法は私的生活に関する一般的な法律でして、財産や家族について定められています。離婚や相続も民法の範囲ですので、日常生活に最も身近な法律でしょう。商法は商業に関する、民法の特別法です。商行為や会社について定められています。法律によれば、会社は社長のものでも、従業員のものでもなく、株主のものです。社会的にも、以前と比べて、会社のオーナーは株主だとの認識が広まってきました。日本では私的な紛争を裁判以外で解決しようとする傾向が強くありました。しかし、司法制度改革により今後は供給面では弁護士数が増加しますし、需要面では裁判を選択する心理的障壁がさがりそうです。徐々に裁判で決することが日本社会でも増加し、欧米との差が小さくなると思います。
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