6-4 アジア
アジアという名前はローマ帝国の属州(支配地)の一つを指したものだったそうです。ユーラシア大陸のヨーロッパ以外の地域を指します。ユーラシア大陸―ヨーロッパ=アジアであり、どちらかというと消極的概念でしょう。ヨーロッパにはキリスト教、ギリシア・ローマ文化、ラテン語という歴史的な共通基盤があります。しかし、アジアには宗教、文化、言語で共通基盤と呼べるものはありません。アジアの中でも、とりわけ東南アジアは地理的な近さから日本にとっては接点が多い地域です。
東南アジアの共通点は、ほとんどの国に植民地の歴史があることでしょう。イギリスやフランスから独立したのは第二次大戦後です。ほとんどが新しい国です。現在でも政情はなかなか安定しておらず、経済も多くの国で規模が小さく、発展途上にあります。最近では、イスラム過激派などの温床になっている点も見逃せません。9.11同時多発テロを引き起こしたアルカイーダの発祥地はアフガニスタンですが、90年代後半の活動中心地はフィリピンやインドネシアでした。国の隅々まで政府の警察機能が行き渡っていないこと、一国内に民族的、宗教的対立が多く見られることがテロリストの活動を容易にしています。また、アジアでは地域の国際的連携はヨーロッパと比較すると強くありません。
その中では、ASEAN(東南アジア諸国連合)は30年の歴史を有する組織であり、東南アジア各国によるアジアの国際連携のさきがけです。このASEANに日本、韓国、中国が加わった会議が97年のアジア通貨危機後から開催されています。アジア通貨危機とは、アジア各国の通貨が下落し、各国に金融危機にさらされた事態でした。アジア通貨危機をきっかけにASEANの会議が拡大したことは、きわめて現実的対応ながら、はからずもASEANの限界を示しました。
05年からは東アジア首脳会議が開催されています。ASEANに日本、韓国、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランドが加わった会議であり、文字通り、東アジア各国によるサミットです。第一回の議題に東アジア共同体がのぼりました。東アジア共同体とはヨーロッパ共同体(EU)の東アジア版です。共同体は理念としては美しいでしょうし、遠い将来の目標になりえます。しかし、アメリカ抜きでは現実にアジアの安全保障は語れません。アメリカへの外交カードとして、東アジア共同体構想をアジア各国が利用することはありえるでしょうが、東アジアにおける米軍のプレゼンスを考慮すると荒唐無稽な感もあります。
第二次大戦前の日本には大東亜共栄圏という思想がありました。崇高な理念ではあったでしょうが、一方的でリアリティがありませんでした。東アジアの安定は当然ながら、そこに位置する日本にもプラスです。東アジア共同体は進めるべき構想ですが、日本政府の言うとおり、自由貿易協定やテロ対策での連携など具体的政策の積み重ねの方が、現実に効果があるでしょう。EUの始まりも小さな関税同盟にさかのぼれます。
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