4-8 選挙制度と改革
規制緩和と並んで行政改革は政治的に手の付けやすい政策です。相手がある外交や世論が必ず反対する増税は、強い政権でないと抜本的政策を実行出来ません。それにくらべて官僚相手の行政改革は政治的リスクが高くありません。弱い政権は往々にして行政改革を進めるポーズをとって、世論にアピールしようとします。
ただし、行政改革が利権の改革にまで踏み込むと話は別です。道路公団改革は道路利権に直結しましたし、郵政改革は郵便局の票と関係しました。単なる行政改革は官僚と霞ヶ関の問題にとどまりますが、利権改革は政治家と永田町の問題になります。利権改革とは、既得権にメスを入れることです。当然、既得権を持っている人は反対します。
政治的にもめる改革の最たるものは選挙制度改革でしょう。政治家にとって選挙制度改革は他人事でなく、自分の生活と将来に直結します。医者が自分の生活習慣病を治療しようとするくらい難しいものです。近年で最大の選挙制度改革は、衆議院での小選挙区制の導入でした。小選挙区制とは選挙区で一人が当選する制度です。以前の衆議院選挙は選挙区で複数人が当選する中選挙区制でした。中選挙区制で政権をとるには、政党は一つの選挙区で複数候補者をたてざるをえません。同じ党内で競うことになるわけですから、党内に派閥ができます。中選挙区時代は、大臣すら派閥の推薦で決まっていました。そのため、大臣は総理よりも派閥のボスの指示に従いました。それが小選挙区制になると選挙区でただ一人が当選することになります。選挙は党の選択に直結し、政権選択の色が強まります。公認候補を決める党執行部が議員の生殺与奪を握ることになりました。これでは選挙互助会としての派閥の意義は低下します。選挙を繰り返すごとに選挙制度改革は浸透します。政治家に最も影響する改革が選挙制度改革です。
改革とは響きのよい言葉です。実際に改革をしない政治家も改革を気取ることがあります。権力を手にするまで改革で、手にした後は反動になる政治家も多いでしょう。改革には失敗もあります。改革が無条件に正しいわけではありません。改革も保守も政治的立場が違うだけです。改革派と保守派が争うのも権力闘争に変わりありません。革命も同じです。革命で王権が倒れても、新しい権力ができただけがほとんどでした。革命によって、庶民の生活が改善したことは、歴史上で多分ないでしょう。革命も権力闘争の一形態にすぎません。
革命は血が流れないと終わらないものがほとんどでした。時にそれが、社会の安定に寄与した面もあったかもしれません。しかし、革命により社会全体で有為な人材が減少するのは確かです。同じ権力闘争でも、選挙による政権交代はその点が合理的です。負けても物理的に命がなくなるわけではありません。選挙での敗北をきっかけに、負けた党が国民に支持されるべく変わることもあります。一つの政治的方向が行き詰っても、他方が別の政治的路線を準備しているなら、国家として大失敗を犯すリスクは減ります。独裁は、戦前の軍部のように後戻りが出来なくなって、政権だけでなく国家そのものを滅ぼします。選挙とはマクロでみると、安定的な社会システムです。
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