6-5 ロシア
ロシアという国名もやっと耳になじんできました。でも、私などにはソ連という国名が未だに強烈に記憶に残っています。20世紀初頭に共産主義国家、ソ連が歴史上はじめて誕生しました。そして、20世紀終わりに崩壊しました。20世紀はアメリカの世紀であるとともにソ連の世紀でもあったでしょう。共産主義では財産は私有が認められず公有化されますが、結局は公有の美名のもと権力者がすべてを支配します。経済原理としても、国や党など供給側の論理だけが通って、需要側の論理が働かないので、共産主義や社会主義を採用した全ての国がその修正を迫られることになります。
大方の日本人にとってのソ連のイメージは良くないものでした。不可侵条約を結んでいたのに、第二次大戦末期に一方的に破棄され、攻め込まれたことが原因の一つでしょう。ソ連はベルリン陥落後もドイツ侵攻を続けました。既成事実を作り上げ、支配地域を拡大するのは、ある種の特徴でした。また、戦後に日本人捕虜をシベリアなどに抑留し、強制労働を課し、多くの死亡者を出したことも悪いイメージの原因です。
ソ連になる前のロシアと日本が戦ったのが日露戦争でした。日露戦争は、南下政策をとったロシアと日本が朝鮮半島をめぐって争った戦争です。日本は日本海海戦に大勝利を治めましたが、国力が疲弊し、講和条約を結ぶ結末となりました。日露戦争の原因であるロシアの南下政策と、ソ連時代の強大な軍事力の記憶が一つになると、ロシアへの警戒感が生じます。ロシアは歴史的経緯からして基本的にはヨーロッパの辺境国です。ヨーロッパの国とは言えないかもしれませんが、アジアの国では決してありません。ですので、シベリアや極東に関する政策は主たる政策ではありません。そのため、ロシアのシベリア、極東政策を分析するなら、ロシアのヨーロッパ政策を検討するのが近道です。日露戦争の原因の一つがクリミア半島への進出失敗でした。
近年、極東地域のロシア軍の脅威低下を指摘する声があります。おそらくは適切な指摘でしょうが、安全保障上の変化というよりは、経済余力の問題だったのではないかと考えます。90年代にロシア経済は不調でしたので、そのあおりを受け、結果として軍事費の減少が生じたのではないでしょうか。近年、エネルギー価格の世界的高まりなどにより、豊富なエネルギー資源を有するロシア経済は活況を呈しています。好景気で国会財政が潤った時にロシアが軍事費抑制を続けるかは注視する必要があります。
日本とロシアの間には北方領土という大きな問題も未解決で横たわっています。いずれの国民も素朴なナショナリズムから領土確保を求めます。領土問題ではどの国の政府であれ、簡単に相手国政府と妥協することは出来ません。日本では沖縄などが平和に返還されたのでピンと来ないかもしれませんが、戦争で取られた領土は戦争で取り返すしかないのが世界史の常です。領土返還を叫ぶだけで戻ってくるほど国際世界は甘くはありません。一般的に、領土問題には、当事者のどちらにも、それ相当の言い分はあります。解決にあたっては、生半可な問題でないと認識することが必要です。
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