4-3 市町村の行政
普通の人が接する役所は、市役所や町役場が多いでしょう。国の行政機関と違って身近な印象ですが、お役所仕事という言葉があるくらい、のんびりしたイメージです。市役所や町役場は地方の行政を担当します。国が治めるのではなく、地域が自分で治めることを地方自治といいます。憲法では第八章で地方自治が定められています。大日本帝国憲法では地方自治は定められていませんでしたので、戦前の中央集権的な行政を改めるために戦後に設けられました。
最近よく市町村が合併します。昭和の中頃に三千数百だった市町村が、21世紀になった数年で、約半分になりました。国が実質的な財政支援により合併を促した結果です。行政サービスを提供するには大きい方が望ましいとの国側の判断が背景にあります。企業の合併と基本的には同じ論理です。明治以来、市町村は合併によって一貫して数が減ってきました。農村から都市に生活基盤が移るとともに、生活範囲が拡大したことが主な原因でしょう。明治の初めには市町村は7万もありました。藩は江戸時代平均で三百に届かなかったそうです。現在の小選挙区も三百くらいです。ひとまとまりの地域としては、現在の千数百でもまだ数が多い気がします。
また、近年、財政的に行き詰まる市町村も増えています。産業が停滞し、人口が減少して、市町村の収入が減ったためです。事態の打開にむけ、産業を振興し、行政サービスを維持しようとすると逆に支出は増加します。市町村の経営が失敗する理由は、民間企業と同じで、収入減少と支出増大です。アメリカでは地方自治体も企業と同様に連邦破産法の適用があります。破産というと深刻な響きですが、内容は会社更生のようなものでして、過去をきちんと清算し、再出発しようという制度です。今後は日本でも自治体財政の破綻を想定して、制度を整備しなければならないでしょう。
財政が行き詰まるのは、地方自治体へのチェックが甘いからです。総理大臣の名前はすぐに思い出せますが、市長の名前は思い出せない人が多いでしょう。政治や行政の関心が国にばかり向かっている結果です。もう少し地方自治体へも目を光らせるのが適当です。知事や市長は、住民に直接選ばれる大統領型のリーダーであり、強い権力者です。本来は、議会が知事や市長をチェックするのが役割ですが、行政範囲が拡大すると議会だけでは不十分になくなります。一つの試みが、行政サービス自体を企業やNPOなどに代行してもらうアウトソーシングです。行政範囲の拡大自体に歯止めをかける方法です。その他にはオンブズマンという名称の民間チェック機構の活用もあります。会社経営に携わった退職者などが、自治体経営をチェックするのも合理的でしょう。大学の機関などが評価する機能を担うこともあるでしょう。
どんな権力であれ、権力は必ず腐敗します。また、絶対権力は絶対に腐敗します。知事や市長が長く職に留まることも社会的にはプラスよりもマイナスの方が大きいでしょう。首長の多選禁止は、腐敗防止の現実的解決策になりうると考えます。
« 4−2 行政と官僚 | トップページ | 4-4 地方への分権 »
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 10−8 再構築(2008.01.11)
- 10−7 犯罪(2008.01.10)
- 10−6 格差とメディア(2008.01.09)
- 10−5 自殺率(2008.01.08)
- 10−4 格差社会(2008.01.07)
