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2007年11月 9日 (金)

4-9 政策より選挙

 国会は法律を作るところと習いました。確かに国会は法律の審議をしますが、実際に法律案を作っているのは官僚です。議員が法律案を提出する議員立法も大概は官僚が案を作成しています。野党の提出法案すら、立法府に出向している中央省庁の官僚が作成することがあるくらいです。
 政治家に法案作成能力がないわけではありません。政治家にも弁護士出身や官僚出身など法律に明るい人はたくさんいますし、族議員と呼ばれる政治家は官僚よりも政策に精通している場合があります。しかし、政治家には法律作成にかける時間がありません。多くの政治家は広い意味での選挙運動に活動の九割を割いているでしょう。結果として、政策に取り組めるのは活動の一割程度になります。理由は政策立案が票に結びつかないからです。政策能力よりも浸透度や知名度が当落の決め手です。なるべく多くの人と会おうとするドブ板選挙が繰り返されるのもこのためです。
 選挙活動は政治家から見れば有権者の声を聞くチャンスですし、有権者にとっては政治家に要望を伝えることのできる機会です。民主主義の政治プロセスで選挙活動は理論上、大きなプラスの効果を持つとされます。ただし、現実には政治家は特定の支援者と会う機会が多いでしょう。熱烈な支援者は政治家にとって、お得意さまです。お得意様対応として旅行やスポーツ大会など色々なイベントが開かれます。しかし、特定の支援者が世論を代弁しているわけではありません。むしろ離れているきらいすらあります。選挙活動が政治プロセスに与えるよい効果も実際には限定的でしょう。
 最近の選挙での変化にマニフェストの普及があげられます。抽象的な約束である公約と違い、マニフェストは具体的な約束です。選挙の際に、個別政策の目標や期限を提示されれば、有権者は判断がしやすくなります。マニフェストは後で政策評価する際の基準にもなります。全体としてマニフェストの普及は良い流れです。ただし、多くの有権者は個別政策の細かい内容すべてを理解できるわけではありません。データを操って、実績を過大にみせかけるなどは慎んでもらいたいものです。
 小選挙区での選挙は政権選択の色彩が強まります。したがって、政治家の個性や活動が当落を左右することが小さくなっています。他方、長期的に支持政党のない無党派層が増加しています。無党派層は支持政党がないだけでなく、政治それ自体に強い関心を持たない人たちです。無党派層は、その時々の空気で投票を決める傾向があるとも分析されています。05年の郵政選挙では、テレビ番組などを基準に多くの人が選挙二週間前までに投票を決めていたとの調査結果があります。各候補が選挙カーに乗って訴えたことなどは、小さな影響しかなかった理屈になります。その上で、当落のポイントになったのは、候補者のクリーンさではないでしょうか。ダーティでも力がありそうな人が当選するのは社会混乱期の特徴です。現在のように、クリーンさが非常に重視されるのは、日本の社会が安定しているからだと思います。

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