2−9 囲い込みたいハード
ITに国境はないと言いました。ITはグローバルです。でも、この場合のITは主に回線や機器などを指しています。これらをハードと呼びます。機械のイメージです。他方、コンテンツをソフトと呼びます。ゲームソフトのソフトです。ソフトには言葉がのります。言葉は地域に根付いたものです。ローカルです。言葉ののらない音楽だって、メロディやリズムはローカルです。言葉や音楽など、表現はみんな土着の要素を持ちます。
コンピューター・ゲーム機はハードです。ハードは世界中に、ほとんど手を加えずに輸出可能です。テレビやオーディオ機器も同じです。ハードに国境はありませんが、規格の違いはあります。ビデオにはVHSのほかにベータという規格がありました。VHSのソフトはベータのハードでは使えませんでした。パソコンでもウィンドゥズやマックといったハードの種類によって、使えるソフトは限られます。規格相互が乗り入れ可能なら問題ないのですが、通常、規格が違えば乗り入れはできません。そうすると規格同士の対決になります。コンピューター・ゲームではゲーム機の規格争いが、ずっと続いています。最近では、次世代の記録方式の規格争いが起きています。規格の争いは、ハードの性能もさることながら、ハードの上で使うことの出来るソフトの魅力が勝負を決します。ほかのハードと差別化をするために、ハードはソフトを囲い込もうとします。
インターネットでも同じです。接続事業者やポータル(玄関)サイトは、お客を集めるために、ソフトに近づこうとします。出来ることならソフトの使用を独占して、他社と差別化を図りたいと思っています。ソフト側が独占させるかどうかは、契約金の多寡によります。でも、基本的にソフトはどんなハードにも自由に流れたいと思っています。作ったからには、色んな人に見てもらいたい、聞いてもらいたいというのが表現する側の心情です。囲い込みたいハードと自由になりたいソフトは相容れません。ハードもソフトも同じ系列で商売することを専門用語で垂直統合と言います。往々にして、強すぎる垂直統合は失敗します。なぜなら、両者は性格もビジネスモデルも大きく異なるからです。
近年、ソフトパワーという単語を耳にするようになりました。文化力などのソフトパワーが国家の安全保障に有効だとの理論が提唱されています。確かに、そういう面はあるでしょう。軍事力が限られている国にとって、ソフトパワーで国際的な発言力を握れることは望ましいかぎりです。しかし、文化的な魅力には紛争をストップするほどの力はありません。歴史的にも、辺境の地で興隆した勢力は文化的先進地を目指しました。憧れる文化を手にしたいとの誘惑に駆られるようです。そういえば、北朝鮮の指導者は日本映画が好きだと聞いたことがあります。しかし、北朝鮮の指導者は親日的ではないでしょう。やはり、ソフトパワーには限界があります。文化輸出の政治効果も同様です。日本アニメの輸出が新たな文化的軋轢になる可能性すらあります。それでも、文化は輸出されるべきです。なぜなら、ソフトは国家のためにではなく、作り手と受け手のためにあるからです。
« 2−8 コミュニケーションの範囲 | トップページ | 2-10 宗教とインターネット »
「パソコン・インターネット」カテゴリの記事
- 2-10 宗教とインターネット(2007.10.20)
- 2−9 囲い込みたいハード(2007.10.19)
- 2−8 コミュニケーションの範囲(2007.10.18)
- 2−7 IT法(2007.10.17)
- 2−6 新しいサービス(2007.10.16)
