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2007年10月13日 (土)

2−2 加えて制度

 モノやサービスを売り買いする市場は需要と供給で決まります。需要が増えれば、価格が上昇し、供給が増えれば価格は下落します。常識でも実感できる経済の大原則です。純粋な需要と供給のほか、情報通信は制度の影響を大きく受ける分野です。製薬業界や教育産業などと同じで、規制の変更によりビジネスモデルや産業構造が変わります。
 情報通信の制度は重層的な構造です。電波や技術基準に関しては世界的な条約があります。EU域内では国内法のほか、EU指令が重要な役割を担っています。また、通信の秘密や表現の自由の確保といった法律的側面から、自然独占性という経済的側面まで複数の規制理由があります。自然独占性というのは、運輸やエネルギーなど大規模な設備を設置する分野では、放っておくと独占になりがちな性質を言います。独占市場では競争が働かずに、非効率や不公平が生じるので、法律などによる何らかの対策が必要になります。
 通信の社会的重要性から、歴史的には日本では電電公社が国内電話事業を長らく独占していました。ヨーロッパでも長い間、公営によってサービスが提供される制度でした。現在でもその名残が随所に見受けられます。一方、アメリカでは民営によってサービスが提供されてきました。公営と民営に関する考え方が、日欧とアメリカでは一般的に異なります。アメリカでは公的な企業を一つだけ作るよりも、競争を通じて勝ち残った企業を規制する方が選ばれるようです。技術進歩が急激なITでは、アメリカ型の方が良好なパフォーマンスをあげる可能性が高い気がします。
 制度というのは大概においてアクセルの役割でなく、ブレーキの役割をするものです。情報通信のように技術進歩が著しい分野では特にそうです。であるなら、技術進歩にあわせて制度を変更する必要が生じます。経済学の言葉を使うと、供給曲線を右にスムーズにシフトさせ、供給量を増やし、価格を下げるのが情報通信政策の目標だと考えます。
 しかし、日本政府も情報通信市場を指導できるわけではありません。環境整備や紛争防止を行い、側面支援するくらいだと思います。成熟した市場には、影響力が限られた行政こそ適当です。情報通信ではアメリカ政府も非規制という名の無作為を総じて続けている印象があります。結果としてうまく進んでいるなら、政府の無作為は悪くありません。
 技術には国境がありませんし、同一技術ならサービスもビジネスモデルも似てきます。サービスが発達する条件の一つに規制が少ない環境があるでしょう。世界中でマイクロソフトは同じ内容の製品を売り、ヤフーやグーグルは同じサービスを展開しています。自然とそれらを規律する制度も、主たる部分は同じになる傾向にあります。ある国で、先進的なサービスを展開するのに困難な規制があったとしても、そのサービスへの需要が大きければ、往々にして制度の方を変更せざるをえません。ただし、おいそれと外国の制度やスタンダード(標準)が受け入れられわけではありません。そうするとやはり、短期では制度の違いが、サービスやビジネスの展開スピードに影響を及ぼすことになります。

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