2−6 新しいサービス
固定電話の売り上げが減っています。古い事業の売上が市場に占める割合は、どの産業も長期的に下落する傾向にあります。下落を補い、更にその産業全体を大きく出来るかどうかは、新しい分野の伸びにかかっています。金融分野では、預金、貸出の伝統的サービスからデリバティブと呼ばれる新しいサービスに利益の源が移りました。しかし、日本の金融機関は古い事業の競争に重きをおき続け、世界的なシフトに乗り遅れました。結果として欧米金融機関の後塵を拝しました。
日本はこの10年、ネットワーク(回線)整備では、お隣の韓国と並んで世界の先頭を走ってきました。高速回線によるインターネット接続や第三世代のデジタル携帯電話は他国に先駆けて普及しました。しかし、付加価値の源泉は、いまや変化しようとしています。欧米では、IT系企業と放送局が積極的に事業提携したり、グーグルのような高度な検索サービスを提供する企業が新たに成長したりしています。金融と同様に、情報通信でも新しい付加価値へのシフトに日本は乗り遅れ気味です。
情報通信産業の新しい付加価値は、ネットワークを利用した高度なサービスになるでしょう。情報やコンテンツを取引する際には、きちんとお金をやりとりするために課金サービスが必要になります。個人情報を扱う際には、ICカードや指紋を利用した本人確認がネットワーク上で必要になります。プライバシーや営業上の秘密を守るためには、安全(セキュリティ)をネットワーク上で保たなければなりません。コンテンツの利用条件や使用料を定める、著作権管理機能もコンテンツ流通には不可欠です。課金、認証、セキュリティ、著作権管理などを提供する高付加価値の通信サービスを専門的にはプラットフォーム・サービスと呼んだりします。単純な回線提供でなく、コンテンツと人をネットワークで結びつけるのがプラットフォーム・サービスです。今後のIT社会では、このプラットフォーム・サービスが重要になります。
プラットフォーム・サービスを握る者はこれまでのマイクロソフトのように優越的な地位を築くでしょう。なぜなら、プラットフォーム・サービスは金融、広告、位置情報など複合的サービスの提供にあたって基盤となるものだからです。加えて、利用者の財布に直結しています。今後、プラットフォーム・サービスは個人端末としての携帯電話の進化にとりわけ貢献するでしょう。
課金、認証、セキュリティ、著作権管理などは、ある種の公益性を持ちます。ですので、日本では多くの関係者により十分な合意のもと、規格や基準が決定されます。他方、アメリカでは個々の事業者が最初から市場競争を繰り広げる傾向です。一般的に、基準や規格は利用者の数が多くなれば現実的な内容に修正されるようです。権利であれ何であれ、きちんとしたお客がついて、ビジネスが回りさえすれば、大方の問題は解決します。日本でも、簡単にサービス開始が出来るようになるほうが、社会的にも効率的だと考えます。
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