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2007年10月28日 (日)

3−8 効率と公平

 日本経済との比較にはアメリカ経済が取り上げられます。アメリカは世界最大の経済大国ですし、アメリカ留学経験者が日本には多いので比較しやすいせいもあるでしょう。しかし、もう一つの巨大経済圏であるヨーロッパを比較に加える方が客観的です。日本の街もヨーロッパの街も車が普及する前に出来上がりました。車がなくても生活できる街並みでした。他方、アメリカの街の多くは車の普及と共に出来上がりました。車がないと生活できません。社会と経済の関係も日欧とアメリカでは異なります。産業革命がおこり、市場経済が発達したのはこの数世紀です。当然ですが、日本もヨーロッパも市場経済が発達する前から存在する古い社会です。他方、アメリカは市場経済の発達とともに国が成長しました。アメリカは生まれながらの資本主義社会です。ヨーロッパや日本とは違います。
 資本主義の特徴は、競争による効率的な市場経済です。資本主義社会であるアメリカは効率を特に重視します。日本やヨーロッパは公平にも重きをおきます。ヨーロッパは、資本主義によって拡大した不平等への反省から社会主義も生み出しました。初期の社会主義には貧民救済をはじめとしてキリスト教の影響が色濃く見られます。社会主義は公平を最重視し、経済を大幅に規制する体制です。現在のヨーロッパ経済にも、職業の免許制や労働時間の制限など、アメリカ経済と比較して多くの規制があります。日本経済と比べてもヨーロッパ経済は色んな面で規制が多いでしょう。昔からある暮らし方に合致するよう、経済に枠をはめている印象です。
 世界で最も成功した社会主義国と日本が評されたことがありました。平等な社会を指しての比喩です。例えば、談合により競争を避け、ある程度の平等を保とうとするやり方です。競争すれば差が生まれます。福沢諭吉が経済書の翻訳にあたって、競争という訳語を生み出しました。幕府の役人は福沢に「争うという字は穏やかでない。西洋の流儀はキツイものだ。」と言ったそうです。戦国を否定し、太平をむねとする幕府の役人がいかにもしそうな発言です。いつの時代も、現状を変えたくない人は競争を嫌います。
 時々、ニュースでグローバリズムと耳にします。元々は国際化くらいが語感でしたが、アメリカ型経済の浸透を指すことが多くなりました。グローバリズムにヨーロッパや日本は反感を覚えがちです。日本の経済社会はアメリカ型よりもずっとヨーロッパ型に近いので、ヨーロッパと似た反応が多く見られます。公平や伝統をないがしろにしてはいけないとの認識が両者にはあるようです。ただし、効率と公平は相反するものではありません。効率的に生産した後に、公平に配慮して再分配することは理論上可能です。理論上はそうだが、失業手当をもらうよりも失業対策の公共事業で働く方が社会としては健全だろうと、以前は私も考えていました。しかし、低成長経済になり、経済も国際化し、競争が激化する中、悠長なことを言っている余裕がなくなってきました。穏やかでなかろうが、キツかろうが、争わざるを得ない効率重視の社会に日本もかわりつつあります。そうでなければ、国として生き残るのが難しくなってきました。

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