3−3 物価とお金の量
物価とは色々な商品やサービスの値段水準のことです。その物価が下落傾向にあることをデフレ(デフレーションの略)と呼びます。90年代後半から10年くらい、日本経済はデフレに陥りました。物価が下がると、買い物できる量が広がるので、ちょっと聞くと悪そうではありません。しかし、販売量が変わらないなら、価格が下がると企業の売上は減少します。売上は減っても、借金は減るわけではないですから、借金をしている企業の負担は相対的に重くなります。バブルがはじけて、多額の借金(負債)が残った企業にとっては、デフレ環境での経営はとりわけ厳しいものでした。
インフレ(インフレーションの略)はデフレの反対に物価が上昇傾向にあることです。インフレになると、お金の価値が低下します。第一次世界大戦後のドイツでは、リアカーいっぱいの札束で日常品を買い物するほどのインフレでした。あんな記録的なインフレは戦争の後くらいにしかおきませんが、経済が発展している時は、物価はゆるやかに上昇するのが一般的です。インフレは戦後日本ですとオイルショックをきっかけとするものが有名です。一年間で20%も物価が上昇しました。一年で100円ショップが全部、120円ショップになるのと同じです。収入が一定の人にとっては、インフレは買い物の幅が狭まることなので迷惑です。反対に、お金の価値が減るのは、借金している人にとっては負担軽減になります。物価上昇に応じた給料をもらっているサラリーマンは住宅ローンの返済が楽になります。
細かい要因を除くと、物価を決める最大の原因はお金の量です。経済全体で、お金がだぶつけば物価は上がり、お金の流通が少なければ、お金の価値が上がるので物価は下がります。ただし、このお金というのは、紙幣や硬貨だけではありません。銀行の預金も手元にないとは言えお金ですので、現金と預金を足したものがお金の総量になります。経済全体のお金の量を管理する機関が中央銀行です。日本なら日銀でして、物価の番人と呼ばれます。お金の量が増えれば、借金がしやすくなり、投資が増えて、経済は活発になります。お金の量が減れば、借金が難しくなり、投資は減って、景気は悪くなります。丁度良くないとインフレになったり、デフレになったりします。各国の中央銀行は、景気と物価の両方を睨みながら、お金の量を調整します。しかし、経済は生き物なので、お金の量の調節を中央銀行は時に失敗します。初めからお金の量に関するルールを決めるべきで、景気に合わせたさじ加減はしない方が良いとの理論があります。私もその方が間違えが少ないとの立場です。
ヨーロッパでは、金融政策は欧州中央銀行だけが行います。それにしても、よくもヨーロッパは通貨統合が出来たものだと感じます。各国は慣れ親しんだ紙幣とも別れましたし、国家ごとにお金の量の調節をする金融政策も手放しました。ユーロ導入の評価は時期尚早かもしれませんが、これまでの歩みは壮大な社会実験として高く評価できます。他方、ユーロに加わらないイギリスも注目に値します。日本は円を捨てることはないでしょうから、独自通貨を保持するイギリスの経済諸状況は将来の日本にとって参考になる事例です。
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