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2007年10月22日 (月)

3−2  経済政策の限界

 景気が悪い時は家計も企業も財布のひもを閉めます。するとモノはどんどん売れなくなり、景気は一層悪化します。個々人にとっての合理的な行動が、社会全体では意図しない結果になることが経済ではよく起こります。神の見えざる手により価格を通じて需要と供給は釣り合う、不況もそのうち回復すると古典的な経済学は教えてきました。しかし、不況が原因で失業した人にとっては、そんな教えはありがたくも何にもありません。景気が回復し、一刻も早く仕事につくことが希望です。
 1920年代の世界恐慌をきっかけに、不況克服が経済学の重要なテーマに加わりました。経済全体でみて、需要よりも供給が多く、モノが売れなくなる現象が不況です。需要は消費と投資から成り立ちます。家計や企業が自己を守るために財布のひもを締めると、消費や投資が滞り、景気は一層冷え込みます。景気の冷え込みを、政府需要の拡大により克服しようとしたのがケインズという経済学者でした。ケインズにより切り開かれたのがケインズ経済学です。第二次大戦前後ではケインズ的な経済政策は不況克服に一定以上の成功を収めました。
 しかし、抗生物質がだんだんと病気に効かなくなるように、1970年代以降は世界中でケインズ的な経済政策もしだいに効き目が弱くなりました。高速道路や空港などの社会資本が整備されてない間は、政府による公共事業は工事による直接的な需要拡大だけでなく、社会資本整備を通じた経済効率上昇にも繋がります。しかし、社会資本が整備されてゆくと公共事業による経済効果は小さくなる傾向にあります。また、不況になれば公共事業が拡大することが知られると、公共事業による景気上昇は実施される前から人々の期待に織り込まれます。結果として、政府需要拡大しても回復気分は高まりません。つまり、経済政策も万能でなく、その経済効果には明らかに限界があります。
 しかも、やっかいなことに経済の処方箋を間違うと大変なことになります。薬を飲んでもすぐに健康は回復しませんが、間違った薬を飲んだら病状が悪化するのと同じです。橋本龍太郎内閣の時に、景気判断を誤り、消費税をアップしたことは不況を招いたと批判されています。田中角栄内閣の大型予算もインフレ悪化を招いたと批判されました。経済政策の失敗は枚挙にいとまがありません。経済政策のさじかげんは非常に難しいものです。皮肉にも、経済に自信のある政治家の方が失敗は多いみたいです。アメリカのように政治任用で専門家に任せる方がリスクは少ないかもしれません。
 経済政策の一つに国際協調というのがあります。サミット(主要国首脳会議)などでは仰々しい経済宣言が発表されます。単なる儀式ではないかと批判されることもあります。ですが、儀式であっても意義はあります。1930年代の世界恐慌では、各国は自国経済保護を意図して、ブロック経済を進めました。各国は、自国さえ良ければよいとの路線になり、国家間の対立が強まりました。その教訓を踏まえると、各国が協調して経済問題に対処する姿勢こそが国際会議では重要です。中味は具体性がない抽象的なものでも構いません。

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