3−9 中国経済
中国経済が目覚ましく発展しています。IMFという国際機関の資料によれば、フランスやイタリアと同じくらいの経済規模です。だいたい世界の5、6位に位置しており、世界経済2位である日本の四割くらいの経済規模です。中国の貿易額は世界の6〜7%に達し、既に日本を上回っています。日本経済との関係も深く、日本にとっての最大の輸入元ですし、第二位の輸出先です。
中国は社会主義経済を建前としていますが、市場経済が導入されて既に30年以上が経っています。80年代以降に政治的混乱が減ったことも経済成長の大きな背景にあります。中国経済の武器は世界最大の人口であり、豊富な低賃金労働力です。将来の市場成長を期待して、諸外国が積極的に中国経済に投資していることも重大な成長要因です。日本の10倍以上の人口ですから、一人当たり生産額が日本の1/10になれば、同じ経済規模になります。世界第二の経済大国になる可能性は大いにあります。
ところで、90年代前半まで、韓国、台湾をはじめとするアジア諸国の経済成長が注目を集めました。アジア諸国の経済成長も現在の中国同様に目覚ましいものでしたが、90年代後半から注目度合いが減りました。経済学では、人口増加、資本(設備)増加、技術進歩の三つを経済成長の要因に挙げます。教育が普及すると、付加価値の高い産業で働くことの出来る近代的労働力が増加します。また、工場などの設備増強は国際機関や外国の資金によって、まかなうことが可能です。アジア諸国は労働力人口増加と資本増加を主たる要因として経済発展しました。しかし、技術進歩は不十分でしたので成長の壁にあたりました。そんな中で、90年代に経済不安が生じて、通貨危機が発生しました。通貨危機後の韓国などは、情報通信をはじめとする先端技術による経済成長に路線を変更しました。中国の経済成長も、人口と資本のみが成長要因なら、必ず壁にあたります。長期の経済成長を実現し、一人当たりの生産額が伸びるかどうかは技術進歩の多寡にかかっています。技術進歩が小さければ、以前のアジア諸国と同じように経済の信用が一気に下落することが起こりえます。
ところで、中国で産業革命が最初に起きた可能性があったと分析する歴史家がいます。しかも二千年前に起こりえたとの説です。そんな昔までさかのぼらなくても、20世紀前半の上海は、アジア最大の都市でした。中国経済の潜在的可能性は昔から高かったのです。しかし、経済が長きにわたって発展するか否かは、最終的には労働意識(エートス)にかかっています。労働を美徳とするキリスト教の考え方が資本主義の成立に不可欠だったとの理論に基づく分析です。その理論では、労働それ自体を美徳とする社会でないと経済発展は持続しません。勤労意識が文化や社会に根ざしているかが、五十年先も中国経済が発展しているかどうかのポイントでしょう。アダム・スミスは経済学を作ったとされる学者です。そのアダム・スミスは、もとは道徳哲学の教授でした。経済を広く長く考える時、社会意識や道徳の与える影響があらためてクローズアップされます。
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