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2007年10月24日 (水)

3−4 土地と期待

 土地を武士が命がけで守ろうとしたことが一所懸命の語源です。土地は昔から財産の代表です。昭和は土地が値上がりする時代でした。値上がりが期待を高め、高まった期待がさらに価格を上昇させる循環でした。魚や野菜のように頻繁に取引がされるモノなら、需要と供給のメカニズムによって、価格は落ち着くべきところに落ち着きます。しかし、土地というのは取引一回あたりの金額が大きい上、頻繁に売り買いされる性格のモノではありません。需要と供給が釣り合う均衡から価格が外れて、そのまましばらく続くことがしばしばあります。
 土地取引で明らかなように、値上がり期待は現実に値上がりをもたらします。タレントの人気がさらに人気を呼ぶのと似ています。逆に、値下がり予想が実際に値下がりをもたらすことも株式市場などではよく見かけられます。資産価値とは、現在価値と将来価値の合計です。みなが、将来価値が上昇すると思えば、資産価値は上昇します。新しく鉄道建設が計画されそうになると、駅予定地周辺の地価は上昇します。期待が価格に反映される現れです。経済学では人々の期待をどのように考えるかで学派や理論が異なります。いずれにしろ、現実に将来変化を織り込んで価格や市場は動きます。
 戦後の地価上昇は乱開発を引き起こしました。美しい風景は、ちぐはぐな景色に変わりました。司馬遼太郎さんはあまり政治的発言をしない作家でしたが、土地問題については土地公有化など大胆な発言をされていました。自民党でも宮澤喜一さんなどは若い時分に、部分的な土地公有制を提唱していました。資本主義とは私有財産制度を基本にしています。歴史的にはヨーロッパの土地所有から所有権は確立されました。所有権は不可侵であり、私有財産制度は最大限尊重されねばなりません。従来提唱された土地公有化は行き過ぎかもしれませんが、利用制限など「私と公」のバランスが強く求められます。土地に関して、「公」に反する「私」の追求がなされると醜い風景や悲惨な結末になります。
 日本の土地制度の特徴に、公図の不備と地権者の多さがあります。豊臣秀吉以来、検地はなされましたが、土地の境界を確定する地図(登記所の公図)には不正確なものが今もたくさんあります。先進国でこんな国は日本くらいです。このことを司馬遼太郎さんも頻繁に指摘されていました。もう一方の地権者については、パリのシャルル・ド・ゴール空港の土地所有者は一桁だと聞いたことがあります。成田空港建設とは経緯など様々なことが異なるのでしょうが、シャルル・ド・ゴール空港建設がスムーズに進んだのには地権者の数が少ないことも影響しているでしょう。戦後の農地解放は、多くの自作農を生み出したプラスの側面もありました。しかし、土地利用に関しては「私」を尊重しすぎる風潮につながった面もあると考えます。私自身、殺風景なだけの街に短い間住んだことがあります。また、昔住んでいた街が開発で無惨な姿になったことも目の当たりにしました。土地を商品でしか捉えないと、殺風景や無惨な姿が残るだけです。

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