1−7 ビジネスモデル
もともと、コンテンツというのは生が基本でした。ギリシア時代の円形劇場での演劇や、絶対王政時代のベルサイユ宮殿での演奏会などを思い浮かべてください。生、つまりライブは一回きりでして、全く同じものを再現することはできません。音や映像のコピーが普及するには、20世紀の技術進歩を待たねばなりませんでした。19世紀までの数少ないコピー・コンテンツの例外が譜面による音楽流通です。作詞・作曲の管理、営業を行う企業を音楽出版社と呼びますが、これは譜面を印刷、出版してビジネスしていたころの名残です。
演劇であれ、演奏であれ、コンテンツを楽しむ都度に実演する人が集まるのは、とても手間隙がかかります。また、実演を生で鑑賞するには時間も空間も制限されるので、鑑賞可能な人数にも限界があります。そのため、実演に接することができるのは、財力や権力のある一部の階層に限られていました。芸術家は鑑賞者である王侯貴族(パトロン)を顧客とする格好でした。しがたって、19世紀まではコンテンツのビジネスモデルといえばパトロンモデルでした。
20世紀に入り、レコードが普及すると様相は一変しました。レコード・パッケージにより、音のコピー・コンテンツが流通することになりました。同様に20世紀後半以降は、ビデオ・パッケージによって、映像のコピー・コンテンツが流通するようになりました。ライブだけだったコンテンツが、コピーを手に入れ、時間と空間の壁を越えました。同時に、コンテンツを手に入れる費用が下がり、多くの人が様々なコンテンツを楽しめるようになりました。パッケージモデルが20世紀のコンテンツ・ビジネスの一つの特徴です。
また、放送の普及により、家にいながら、劇場やホールと同じ時間にライブを楽しむことが可能になりました。初期の放送は、テープが非常に高価だったこともありライブ(生放送)が中心でした。ちなみに、放送に関する法律や契約には現在でも生放送主体だった頃の影響がみられます。費用の点で民間地上放送の視聴者は直接、コスト負担をしません。企業が宣伝のため支払う広告代金が放送コストをまかなっています。王侯貴族にかわって、大きな企業がコンテンツを下支えするモデルの登場です。広告モデルの普及が20世紀のコンテンツ・ビジネスのもう一つの特徴です。
21世紀の特徴は、インターネットを原因とするものになるでしょう。コンテンツはCDやDVDなどのパッケージ商品による物流からネット流通へ転換が生じています。放送でも、ヨーロッパでは既に、過去の番組をネットで視聴できるような試みが始まっています。番組と広告が一体となっていたチャンネル編成にほころびが生じつつあります。パッケージモデルも広告モデルもともに変化に直面しています。まだ、21世紀のコンテンツのビジネスモデルは確立されていません。抽象論でいうと、技術進歩を取り入れ、ユーザーのニーズを満たすモデルが残ることになります。
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