2−1 ITは鉄砲
ITとはインフォメーション・テクノロジーを略した言葉です。情報技術が直訳ですが、日本語なら情報通信がぴったりくる言葉でしょう。携帯電話やインターネットが普及して、ビジネスでもプライベートでもコミュニケーションに大きな変化が生じました。少し前は、これをIT革命(情報通信革命)と呼んだりしました。
個別の技術を少し眺めてみます。パソコンの性能は一年に数倍のスピード(ドッグイヤー)で進歩してきました。ドッグイヤーとは、人間に換算すると犬が一年で数年分の歳をとることの比喩です。処理速度や記憶容量など、端末の技術進歩が一つの大きな柱で、もう一つの大きな柱がネットワーク(伝送路)の進歩です。通信網は音声のやりとりするものから、映像を含むあらゆるデジタル・データをやりとりするものに変化してきました。放送網も世界的にデジタル化が進んでおり、日本の地上波も2011年にデジタル化が完了します。デジタルの高速携帯電話網も日本全国で完備されました。携帯電話によって、日本のいたる所でいつでも通信が出来るようになりました。今後は更に高速・大容量化が進み、携帯電話で高画質な映像を伝送できるようになります。通信・放送や屋内・屋外の別なく、総合的なデジタル・ネットワークが世界的に整備されようとしています。
ITの普及により、メールで迅速に意思疎通することが世界中で増えています。色々な情報をウェブから集めることが可能になりました。オークションサイトでモノを売ったり、企業のサイトでモノを買ったりするようになりました。生活の色々な場面でネットワークを介した活動が広がっています。物流分野などでは、モノの管理もネットワークで行われるようになりました。これからはモノもカネも情報もすべてが、ネットワークでやりとりされる社会になります。現在起きている変化はその始まりにすぎません。
技術には、時代をがらりと変える威力があります。蒸気機関の発明が産業革命の扉を開け、イギリスを世界の工場にしました。鉄砲がいくさを変え、日本の戦国時代を終わりに導きました。ちなみに、戦国時代の日本には、全世界の半分の鉄砲があったとの推計があります。驚くデータです。話を戻しますと、ITはバイオテクノロジーとならんで、現在の蒸気機関であり、鉄砲です。生産方法やライフスタイルを劇的に変える力をもっています。21世紀の世界は進歩が著しいバイオと並んでITの時代になるでしょう。
情報通信分野は研究開発が決定的な要素です。すごい技術が出てくるとそれ以前の関連する技術は駆逐されます。いま普及している技術も、それを持っている企業も、10年先は消えている可能性があります。研究者にとっても経営者にとっても、最も競争的な領域です。油田を持っていたり、大地主だったりして安泰なのとは全く異なります。リターンもリスクも大きい世界です。だから、注目も集まるし、優秀な人も集まるのでしょう。また、情報通信はバイオと違って、研究開発に倫理的にブレーキをかける必要もほとんどありません。一般利用者はさして心配することなく、今後も情報通信技術が進歩する恩恵をこうむることが可能です。
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