3−10 アメリカ経済
アメリカの生産額は世界の3割を占めます。EU全体と同じ規模です。日本は一割強です。第二次世界大戦以降ずっと、アメリカは圧倒的な経済大国です。70、80年代はアメリカ経済のかげりが指摘されましたが、日本が停滞した90年代に、情報通信などを牽引役として華々しい成長を遂げました。
アメリカは生まれながらの市場経済国です。経済には市場の論理が徹底されています。あくまでも会社は儲けたり、稼いだりするための器です。日本と比べて、生活共同体としての会社の役割は低いです。会社の所有者たる株主も配当や企業成長をシビアに求めて、自己の利益を強く主張します。会社は単なる器ですから、器同士を合併させたり、売買したりすることは問題解決の普通の方法です。また、巨大企業の倒産に際しては、日本ではすぐに政府による救済の話になりますが、アメリカでは破産制度を用いて再建することがよく見られます。倒産すら経済原則に則り、効率的に処理します。
組織内の機能を十分高めるために、分業化が進んでいることも特徴です。日本のようにサラリーマンの最後のポストが取締役ではありません。アメリカでは経営を担う取締役と、雇われているサラリーマンとは、異なる次元の職階です。職業が弁護士や会計士というのと同じ意味で、社長が職業というのがぴったりくる人がたくさんいます。勤めあげた最後に社長になるわけではないですから、40代後半のトップは巨大企業でも頻繁に見かけます。実績を上げる経営者は引っ張りだこなので、日本と比較して大変高額な収入を得ます。財務担当や法務担当が専門職として確立し、会計士や弁護士に活躍する場が多いのも分業化の結果でしょう。
専門職は組織が変わってもやっていけるので、人材の移動は活発です。アメリカでは大学教員の移動すら頻繁です。ビジネスだけでなく、学術などあらゆる分野で競争が激しく、評価と報酬が密接しています。流動性が高いため、意外かもしれませんが、アメリカではコネが非常に大切です。組織と組織の関係でなく、個人と個人の関係が重視される結果です。また、専門性を証明するには学位も重要になりますから学歴が尊重されます。他方、普通の労働者は労働者で、しっかりと自己主張をするので組合やユニオンも強くなります。
アメリカ経済は、効率を追求し、成果を重視します。すばらしい成果を修めれば、誰でも高い地位と報酬を手に出来るダイナミックなシステムです。また、成功は能力の証に見られがちですし、成功者が高く尊敬される社会です。裏を返せば、成功してない人には窮屈な社会です。日本みたいに不成功を不運のせいにできるくらいの方が、大多数の人にとっては暮らしやすいと個人的には思います。
アメリカ経済の非効率な面を挙げるなら、貧困層の固定化傾向です。競争による結果としての格差は不公平ではありませんが、競争に参加できず、貧困から抜け出せないのでは不平等です。加えて、人材活用からみても非効率です。貧困層固定化は社会の不安定化にもつながります。効率重視のアメリカで、リベラルな民主党が政権を時々担うのは、効率社会における公平配慮のバランスからだと考えます。
